HPA Axis
副腎疲労(HPA軸機能障害)内分泌を専門とする医師が解説

「副腎疲労」という言葉を、
いちど整理します。

インターネットで「副腎疲労」という言葉を目にして、当てはまると感じてこられた方が多くいらっしゃいます。当院は、その訴えを否定しません。ただし「副腎疲労」は現時点で医学的に確立した病名ではなく、一方で本当に治療が必要な副腎の病気は別に存在します。まずここを分けることが、遠回りに見えていちばんの近道だと考えています。

HPA軸コルチゾール慢性ストレス副腎不全の除外
Terminology

3つの言葉を、分けて考えます

混同されたまま語られることが多い言葉です。ここを分けると、進む道が見えてきます。

TERM 01

「副腎疲労」

慢性的なストレスで副腎が疲れ果て、コルチゾールを出せなくなるという説明です。書籍やインターネットで広まりましたが、国内外の内分泌の学会は、これを確立した疾患概念とは認めていません。症状を訴える方が実在することと、その説明が正しいかどうかは別の問題です。

TERM 02

HPA軸の乱れ

視床下部・下垂体・副腎という、ストレスに応じてホルモンを調整する仕組みをHPA軸と呼びます。慢性的な負荷や睡眠不足で、この調整のリズムが変わりうることは研究されています。当院はこの枠組みで状態を捉えています。

TERM 03

副腎の病気

アジソン病(副腎皮質機能低下症)やクッシング症候群など、治療が必要な副腎の病気は実在します。強い倦怠感・体重減少・血圧低下・皮膚の色素沈着などがある場合、これらを見逃さないことが最優先です。

当院の立場。 「副腎疲労です」と診断することはありません。かわりに、①治療が必要な病気がないかを確認し、②HPA軸を含めた体の状態を評価し、③生活の中で整えられるところから手をつける、という順で進めます。
Cortisol

コルチゾールには、1日のリズムがあります。

朝に高く、夜に低くなるのが本来の形です。量だけでなく、リズムを見るという考え方です。

Mechanism

HPA軸のしくみ

ストレスに応じてホルモンが調整される流れ

視床下部 CRH を出す 下垂体 ACTH を出す 副腎 コルチゾールを出す 出しすぎ を抑える ストレス・ 睡眠不足・ 感染・炎症
この流れ全体をHPA軸と呼びます。慢性的な負荷が続くと、出る量だけでなく1日の中でのリズムが変わることがあると考えられています。

コルチゾールの1日の変化(イメージ)

起床時 夕方 就寝前 本来のリズム 平坦になった例
朝に上がりきらず、1日を通して平坦になる場合があります。この形を確認するために用いるのが唾液コルチゾール検査です。図はイメージであり、実際の測定値ではありません。
Symptoms

ご相談の多い症状

これらがあるからといって、副腎に問題があるとは限りません。だからこそ確認します。

朝と日中
  • 朝、起き上がるのがつらい
  • 午前中は頭が働かない
  • 夕方になると急に元気が出る
食習慣の変化
  • 甘いものや塩気の強いものが欲しくなる
  • カフェインが手放せない
  • 食後に強い眠気がある
ストレスへの反応
  • 些細なことで消耗するようになった
  • 回復に以前より時間がかかる
  • 立ちくらみがある
Our Approach

当院での進め方

01

治療が必要な病気を除外します

副腎皮質機能低下症をはじめ、甲状腺の異常、貧血、糖代謝の異常、睡眠時無呼吸、うつ状態。まずここを確認します。これが最も重要な工程です。該当する場合は、そちらの治療を優先します。

02

HPA軸の状態を評価します

必要と判断した場合、唾液コルチゾール検査で1日の変化を確認します。保険適用外の検査です。結果だけで診断はせず、症状と経過とあわせて解釈します。

03

生活の中で整えられるところから

睡眠、光の浴び方、カフェインとアルコール、食事の内容とタイミング、運動量。HPA軸に影響しうる要素を、続けられる形で調整します。

04

栄養と運動の指導につなげます

健康運動指導士が担当します。必要に応じて栄養素の補充をご提案しますが、必要がないと判断した場合はその旨をお伝えします。

ご注意ください

  • 「副腎疲労」は確立した診断名ではないため、これに対する治療として確立したものもありません。
  • 他院やインターネットでステロイドの服用をすすめられた場合は、自己判断で始める前に必ずご相談ください。不適切な使用は、本来の副腎の働きを損なうことがあります。
  • 唾液コルチゾール検査およびそれに基づく栄養指導は保険適用外です。費用は事前にご説明します。
FAQ

よくあるご質問

「副腎疲労」と診断してもらえますか。
診断名としてお伝えすることはありません。確立した疾患概念ではないためです。かわりに、確認できたことと確認できなかったことを整理してお伝えします。
他院で副腎疲労と言われました。治療を続けてよいですか。
現在の内容がわかるものをお持ちください。特にステロイドを服用されている場合は、自己判断で中止せず、まずご相談ください。
サプリメントを飲んでいますが、続けてよいですか。
内容を確認させてください。検査結果に影響するものもあるため、検査前に一時中止をお願いする場合があります。
検査は必ず必要ですか。
いいえ。問診と血液検査で説明がつく場合や、まず生活の調整から始めたほうがよい場合もあります。ご希望と状態にあわせて相談します。
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