「副腎疲労」という言葉を、
いちど整理します。
インターネットで「副腎疲労」という言葉を目にして、当てはまると感じてこられた方が多くいらっしゃいます。当院は、その訴えを否定しません。ただし「副腎疲労」は現時点で医学的に確立した病名ではなく、一方で本当に治療が必要な副腎の病気は別に存在します。まずここを分けることが、遠回りに見えていちばんの近道だと考えています。
3つの言葉を、分けて考えます
混同されたまま語られることが多い言葉です。ここを分けると、進む道が見えてきます。
「副腎疲労」
慢性的なストレスで副腎が疲れ果て、コルチゾールを出せなくなるという説明です。書籍やインターネットで広まりましたが、国内外の内分泌の学会は、これを確立した疾患概念とは認めていません。症状を訴える方が実在することと、その説明が正しいかどうかは別の問題です。
HPA軸の乱れ
視床下部・下垂体・副腎という、ストレスに応じてホルモンを調整する仕組みをHPA軸と呼びます。慢性的な負荷や睡眠不足で、この調整のリズムが変わりうることは研究されています。当院はこの枠組みで状態を捉えています。
副腎の病気
アジソン病(副腎皮質機能低下症)やクッシング症候群など、治療が必要な副腎の病気は実在します。強い倦怠感・体重減少・血圧低下・皮膚の色素沈着などがある場合、これらを見逃さないことが最優先です。
コルチゾールには、1日のリズムがあります。
朝に高く、夜に低くなるのが本来の形です。量だけでなく、リズムを見るという考え方です。
HPA軸のしくみ
ストレスに応じてホルモンが調整される流れ
コルチゾールの1日の変化(イメージ)
ご相談の多い症状
これらがあるからといって、副腎に問題があるとは限りません。だからこそ確認します。
- 朝、起き上がるのがつらい
- 午前中は頭が働かない
- 夕方になると急に元気が出る
- 甘いものや塩気の強いものが欲しくなる
- カフェインが手放せない
- 食後に強い眠気がある
- 些細なことで消耗するようになった
- 回復に以前より時間がかかる
- 立ちくらみがある
当院での進め方
治療が必要な病気を除外します
副腎皮質機能低下症をはじめ、甲状腺の異常、貧血、糖代謝の異常、睡眠時無呼吸、うつ状態。まずここを確認します。これが最も重要な工程です。該当する場合は、そちらの治療を優先します。
HPA軸の状態を評価します
必要と判断した場合、唾液コルチゾール検査で1日の変化を確認します。保険適用外の検査です。結果だけで診断はせず、症状と経過とあわせて解釈します。
生活の中で整えられるところから
睡眠、光の浴び方、カフェインとアルコール、食事の内容とタイミング、運動量。HPA軸に影響しうる要素を、続けられる形で調整します。
栄養と運動の指導につなげます
健康運動指導士が担当します。必要に応じて栄養素の補充をご提案しますが、必要がないと判断した場合はその旨をお伝えします。
ご注意ください
- 「副腎疲労」は確立した診断名ではないため、これに対する治療として確立したものもありません。
- 他院やインターネットでステロイドの服用をすすめられた場合は、自己判断で始める前に必ずご相談ください。不適切な使用は、本来の副腎の働きを損なうことがあります。
- 唾液コルチゾール検査およびそれに基づく栄養指導は保険適用外です。費用は事前にご説明します。
