定義
今のところ原因は不明で、遺伝的素因にいくつかの環境因子が加わって発症します。甲状腺にあるTSH(Thyroid stimulating Hormone)受容体に対して、自己抗体が産生され、甲状腺ホルモン産生が過剰となる病気です。
症状
発汗、食欲亢進、暑がり、体重減少、眼球突出、皮膚掻痒感、動悸、体動時息切れ、ふるえ、多動、下痢、不眠無月経…etc.
(約 10%の患者では食事量が増える為に体重減少ではなく、体重増加することがあります。その他、びまん性甲状腺腫やGraefe徴候振戦etc.も存在することがあります。)Graefe(グレーフェ)徴候:下方視(下を見つめる)の時、上眼けん運動が眼球運動より遅れ、角膜の上に白目の部分が残る徴候。
検査
- 1
- 採血
(空腹時でなくでも構いませんが、甲状腺ホルモン過剰により血糖値が高くなることがあるので、空腹時の方が情報量が増えます。)
- 2
- 甲状腺エコー
- 3
- 放射線同位元素99mTc摂取率
通常は採血、甲状腺エコーのみで評価可能です。ただし、後述する無痛性甲状腺炎とどうしても区別がつかない時は(ⅲ)の99mTc摂取率の検査をします。採血はTSH (甲状腺刺激ホルモン)、FT3、FT4(甲状腺ホルモン)、TSH受容体抗体で評価します。
治療
日本では、薬物療法が最も主流ですが、海外(アメリカやヨーロッパ)ではアイソトープ治療も多く行われています。
1
薬物療法
療法の特徴
- 長所:簡便、外来で治療できる
- 短所:療期間が長い
チアマゾール(MMI)とプロピルサイオウラシル(PTU)が用いられます。
それぞれ薬剤を何錠から服用するか、あるいは、どのように薬を減らしていくかはそれぞれの患者さんの状態で異なりますのでご相談下さい。
最近の報告では、 FT4の値が5以上か否かで、初期投与量を調節して投与する事が効果面及び副作用発見率の面で、望ましいと言われています。定期的に採血して、甲状腺機能を確認しながら、薬剤量を調節します。だいたい1〜2年ぐらい寛解までにかかると考えられます。
2
放射性アイソトープ治療
療法の特徴
- 長所:治療期間が短い、甲状腺が縮小する
- 短所:妊娠中は禁、入院が必要、不可逆性
MMI | PTU | |
半減期 | 6〜9 hr | 1〜2 hr |
副作用 | ||
薬疹 | > | |
無顆粒球症 | ≒ | |
特異副作用 | インスリ自己免疫症候群 | MPO、ANCA陽性糸球体腎炎 |
131 I の経口投与し、24時間の甲状腺131 I 摂取率を測定し、有効半減期を算出して、投与量を決定し治療量の131 I を投与します。この治療にはヨード制限が治療前及び治療中に必要です。
131 I の治療効果は約2〜3週目から出現し、最大効果は約6〜12ヶ月に認められます。甲状腺機能が変動している間は、TSH、FT3、FT4を1〜2ヶ月毎に測定します。
3
手術療法
療法の特徴
- 長所:治療期間が短い、甲状腺が縮小する
- 短所:効果不安定、入院が必要
甲状腺腫大が著名な方や薬物治療に反応しずらい方は甲状腺亜全摘の適応となります。抗甲状腺薬(MMI,PTU)で再燃を繰り返す方や早く改善したい方には良い適応ですが、残り量の程度により永久的に甲状腺機能低下となることがあります。