現在、空腹時血糖値の正常上限値は109mg/dl以下となっていますが、糖代謝の全く正常な人の空腹時血糖値はおよそ70の後半から80の前半までです。(もちろん正常な人で100前後の人もいますが。)
最近私たちの大学でよく施行されている24時間血糖モニタリング(CGMとも言われる)を行うと、空腹時血糖値が109以下あるいはHbA1cが5.8%未満の人でもかなり食後の血糖値が大きく上昇している方々が多いことがよくわかってきました。家族に糖尿病の方がいる方や最近少しづつ血糖値が上がってきた方はご注意下さい。
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血糖値が少し高めと言われた方、糖尿病と診断されている方は下記問診票をご記入の上、クリニックまでご来院くださいませ。
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食後高血糖という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、通常、いつどんな物を食べて、いつ血糖を測定しても正常な人は血糖値は140mg/dlを超えません。しかし食後高血糖と呼ばれるような状態の人は食後に180mg/dlや250mg/dlと著しく血糖が上昇しているのです。
この状態を知るには先ほどの24時間の血糖モニタリングや糖負荷試験をやってみる他ありません。
通常人間ドックや検診で行われる空腹時の血糖値はほんの一部の評価しかできていないのです。
ではなぜここまで食後の血糖値のことを詳しく説明すると思いますか?
その理由は二つあります。
1
日本人は欧米人に比べて非常に炭水化物処理能力が低い人が多く、容易に血糖が上昇しまうため。
2
動脈硬化は空腹時血糖値よりも食後血糖値の変動の幅が大きい人の方がより進行することが多くの臨床試験からわかっているため。
上記のことはほとんど糖尿病を専門に診る医師でないと評価できていません。
現在多くの糖尿病の方を診療する立場で感じるのは、完全に糖尿病(それも相当進行してから)になってから治療を始める人がいかに多いかということです。 糖尿病になる一歩前、つまり境界型と呼ばれる時点でいかに食事や運動あるいは内服治療をして動脈硬化を遅らせ、体の中から若返って頂くかが重要なのです。
先ほど、多くの日本人は炭水化物処理能力が低い、と書きましたが、炭水化物をとってはいけないという意味ではありません。 必ずバランス良く炭水化物も接取することが大事ですが、カロリーを抑えるために脂肪やたんぱく質を減らして極端に炭水化物を多くとってしまうと血糖は上昇しやすいことを知らなければいけません。
現在の日本ではカロリー制限こそが糖尿病治療に必要と考えられ、一度糖尿病と診断されると質素な食事を一生続けなければいけない、と指導されていることが多いのですが、実際には一人一人栄養指導は異なるべきなのです。コレステロールも高い人がいれば、体重がオーバーの人もいますし、コレステロールも中性脂肪も正常な痩せている方もいます。
当クリニックの糖尿病治療
当院では慈恵医大で共に働いていた管理栄養士に上記のようなお話を個別に指導してもらい、より良い糖尿病治療を実践しています。
糖尿病治療の際、非常に重要なことは、コレステロールや中性脂肪などの脂質の評価、血圧の評価、禁煙の指導、心臓、脳血管、腎臓や神経障害の合併症評価、頸動脈などの動脈硬化の評価など多くの評価項目を一つずつ丁寧にチェックしてバランスを整えていくことです。
糖尿病を専門に診る当クリニックで本当の糖尿病治療(目先の血糖コントロールだけではなく10-20年後を見据えた体全体のコントロール)を受けて頂き、より健康で若々しい生活を送って頂くお手伝いができればこれ以上の喜びはありません。