本当に大切なこと

昨日2021年1月7日 菅総理大臣より非常事態宣言が発出され、本日1月8日から、約1ヶ月間再び外出や飲食店や演劇、商業施設の営業時間短縮要請が施行されることとなった。

新型コロナウィルス感染者数の報道が毎日続く中、東京都民、いや日本国民はどのようにその報道を捉えているのだろうか?

増え続ける患者数に不安を抱き、この先の未来を嘆き悲しむ人もいるだろうし、自分には関係無いと全く恐れを感じない人もいるだろう。またお店を早く閉めることになったら、とうとうお店を閉店することになるのだろうか、と今後の生活を心配している人もいるだろう。

直接東京都と契約を交わし、自らのクリニックにて新型コロナウィルスのPCR検査をいち早くやり始めた一内科医としての私見をここで述べたい。少し長くなるかもしれないが最後まで読んで頂ければ幸いだ。

新型コロナウィルスが流行する前は甲状腺専門医、糖尿病専門医としてほぼ全ての患者さんが予約のみで、風邪の方をクリニックではほぼ診ることがなかったが、流行当初、発熱のある方は自院では診察せず保健所にて対応、とする医療機関が現れたため、急遽、風邪・発熱外来を開設し、それ以降、通常診療と完全に分けて診察することになった。

昨年の風邪・発熱外来開設時と比較して、現在はおそらく約10倍くらいの方が来院されている。この差は昨年はまだ自院にて新型コロナウィルスPCR検査を行えなかったことが最も大きい要因だと感じる。多くの方が感冒症状が自分に現れた時に自分もとうとうコロナに罹ったのでは?と心配になるのではないだろうか。家族や職場に迷惑をかけてしまうのでは?と危惧する方も多くいらっしゃる。周りのことも心配だが、自分も熱や倦怠感で辛い。そのような患者さんが非常に多く来院される。

その時に医師に求められることは、可能な限り現在の重症度を客観的に評価し、正確な診断を下し、不安を払拭するためにPCR検査を行い、大丈夫ですよ、と励ますことではないだろうか。しっかり脱水にならない様に水分をしっかり摂るように話し、感染症で失われるビタミンやミネラルを補給するように促し、適切な治療をする。

そして自宅で家族や同居人がいる場合には、感染予防対策を説明する。皆さんもご存知の通り、再び保健所の業務も多くなり、保健所のひとりひとりが誠心誠意少しでも早く対応しようと努力していても、新型コロナウィルス感染者への対応も少しずつ遅くなってきている。連絡が保健所からあるので待っていてください、と一言だけで終わったら、もしすぐ連絡が保健所から無かった時に不安になる人もいるだろう。だからもう一言必要なのだ。もしなかなか連絡が無くて体調が変化して不安になったらいつでも連絡を下さい、と。

そして私が必ず風邪診療の際に話すことがある。

マスクや手洗いは大切だが、それは着飾る洋服のようなもの。日頃からの身体作りなくして健康ではいられないのですよ、と。来院されるほぼ全ての患者さんに日々の診療で話している良質な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動習慣。この3要素なくして風邪の予防は出来ません、と話している。

3要素が揃っている人には、そういう身体であれば、必ず今日お渡しする薬で良くなりますよ、と励まし、何かしら欠けている人にはその3要素の大切さの啓蒙をする。医療機関に今後求められることは、ただの治療だけではなく、健康でいられるための啓蒙だと思う。私は普段の診療時から、通常の診療と関係ない健診の結果を持参して頂いて、何かしら異常があれば、何が問題で、何が問題では無いのかを一緒に考えることにしている。

健康作りは自ら何が大切かをよく考え、行動して初めて始まると思う。テレビや新聞の情報も重要だが、それを鵜呑みにしては健康にはなれない。健康で気持ち良く生きるために、何が大切かを自らが考えることがとても重要ではないのか?新型コロナウイルス感染症数の報道が連日あるが、その総数の約80から90%は軽症の感冒と同じ経過をたどるのに、陽性者数の情報は本当に重要なのか?誰とも話さないのに電車の中でマスクを付ける意味は本当にあるのか?風邪症状でも熱だけで咳や鼻水など飛沫、接触感染を起こしにくいと思われ人が横に座ると感染するのか?ただ演劇をじっと観るだけで声を出さないなら、収容人数を制限する効果は本当にあるのか?飲食の際に話すことで感染させる可能性があるから飲食業は20時までで終了と言うが、集団発生した飲食店では密な環境があったからではないのか?密ではなく楽しくても大声で話さないのならリスクにならないのではないか?などそれぞれが自分で考えるべきではないのだろうか。誰もが正解を知らない中で、報道のまま信じることは私は危険だと思うし、しない。

ワクチン接種も同じだ。感染するリスクが高い方で希望する方は接種するべきだろうが、リスクが低い人が接種する必要があるのか考える余地は副反応の面だけでなくたくさんある。

新型コロナウイルスに感染することが怖い方は外出しなければ良いが、感染者が何人になったら、その方々は安心するのか?自らがやるべきことをして、もし罹患したらしょうがないと思う潔さが人の心にゆとりを生むのではないか?ギスギスした気持ちは健康を生むか?色々な意見はあって良いが、私は平静の心が無ければ健康には絶対になれないと思う。そしてそれを来院する患者さんに伝え、私の考えに賛同出来ない方は来院しなくなるのだろうが、私はそれで良いと思っている。結局は五十子大雅という人間を信じて頂き、五十子クリニックのスタッフに会いたいと思って頂ける患者さんしか残らないのだと思っている。京都時代の恩師から、京都を離れる際に、オスラー博士の平静の心という本を頂いた。私の座右の銘となる言葉に溢れた素晴らしい本なので、宜しければ興味のある方はぜひ読んで頂きたい。

相手を思いやる優しさや愛がなければ、人と人との関係が希薄となり、結果人からも大事にされなくなり、またそれがその人の心に疑念や恨み、妬みを生む。何事も悪循環と好循環がある。なので、私は風邪の人を見た時に、この人には近くには来て欲しくない、と思うのではなく、可哀想だなあ、早く良くなって欲しいと思って欲しい。神経質になり過ぎることにより体に良い作用は生まれる訳がない。

感染症のことを忘れたら良いと言っているのではない。自らがやるべきことを考え、自分を律して行動し、大らかな気持ちで生活することが感染症対策には欠かせないと確信していることをお伝えしたい。

本当に大切なことをそれぞれが考え、行動する、それが今の時代に求められているのだろう。

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